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デッカイ事は失敗だった

仲間とのライブを町の公民館に決めた。近隣の町で一番大きな施設だ。
収容人員は、千人の大ホール。 公民館のおじさんは言った。

「小ホールにした方がいいと。君達、本当に大ホールでいいのかい?」
いいんです。

近くの町の商店に、ポスターを作り貼らせてもらった。当日がやってきた。
開演は、午後六時半。 俺達は早くに入場し準備した。

公民館に入った時、申し込んだ時のおじさんがいた。
顔を合わせた時に、あーあーというような顔をしていた。不安がよぎった。

控室で気合いを入れた。幕が開いた時、赤色の椅子しか見えなかった。
皆、目を疑った。人っ子一人いない。自然に演奏が止まった。

「ほれみろ!」  雄二が言った。
最後まで、おじさんの言う事を聞いた方がいいと訴えてたヤツだ。

”あー!やっちまった!”  殺人などした事はないが、重大事件でも起こした感覚に囚われた。
しばらく沈黙したあと、俺は勇気を出して言った。

「お客様、おいでになりましたら前の席にどうぞ。」
客は、もっと勇気を出して前に出てきた。 五人だった。

ホールの扉だろうか、奥で光が見えた。 多分、客が逃げたのだろう。
いたたまれずに去ったのだ。 いたたまれないのは、こっちも同じだ。

客が五人で俺らも五人。 完全燃焼でやりきった。 友情さえ芽生えた気がした。
終わりには、五人を出口まで見送った。 みんな高校生だった。

顔を見ると、”この事は、誰にも言わねえだ” という顔に見えた。
まるで、犯罪者をかばう眼差しだった。 北国の冬は厳しかった。

外気温マイナス十度。身も凍り、魂までも凍ってしまった一日だった。


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