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おじいちゃん


 森田自転車の親父さんと、おじいちゃんが。話をしていた
最近の歌うたいは、歌ってんのか踊ってんのかわからねえやと。
今から四十五年も前のことだ。

おじいちゃんは俺のために、自転車を買ってくれた。

白金堂(はっきんどう)の親父さんと、おじいちゃんが話をしていた。
最近の歌うたいは、歌ってんのか、踊ってんのかわからねえや。

おじいちゃんが俺のために腕時計を買ってくれた。

商工会のくじ引きで、サマーランドの招待券が当たった。

おじいちゃんが一緒に行ってくれた。

くじに当選した人たちと、バスで行った。
子供と大人で四十人はいたと思う。

サマーランドに着き、大きな部屋に入った。
長くて大きなテーブルの上には、お酒やジュース、お菓子が並んでいた。

子供たちの多くは、大人に付き添われプールに行ったり、遊園地の乗り物に行ったと思う。

子供たちの中に、知的障碍者の子供がいた。
小学四年生の俺よりも、はるかに大きな中学生だと思う。
同級生の女の子のお兄ちゃんだ。

周囲の大人たちが誰一人として相手にしない中、
おじいちゃんはその子を、一生懸命にあやし相手をしていた。
俺のことは放っといて、ずっとその子の面倒を見ている。

お菓子をあげたり、窓から見える外の様子を説明したり、
まるでおじいちゃんが、その子の保護者のようだ。

付き添っていたお母さんが、申し訳なさそうに言った。
「どうもすみません」と。

おじいちゃんは普段見せない笑顔で答える。
「あーいーいー」と。

おじいちゃんは余計な話は一切しない。
世間話し程度はするが、
人の悪口を言ったり、噂話などは、絶対に話さない。
これは唯一母親が褒めていた。

母親や、その兄妹達がいっていた。
おじいさんは因業で困ると。
ちなみに因業とは、頑固で思いやりに欠けるという意味だ。

みんなは知らない。
おじいちゃんの本当の優しさを。

おじいちゃんは、腕のいい、正真正銘の魚屋だった。
まだ十分に新しい刺身も、時間が経ったと下げてしまったそうだ。

母親たちが、まだまだ大丈夫だと言っても、一切出さなかったと言っていた。
頑固一徹を地で行く明治の人間だ。

喜怒哀楽は、人前ではあまり見せない。
特に身内には。
だから誤解されるのだ。
因業と。

だけど本当のおじいちゃんの心は違う。
心が素直であったからこそ、自然と反応したのだ。
あの男の子の心と。

赤ん坊や、幼い子供に向けるおじいちゃんの目は、
本当に優しかった。
あやす姿も無邪気そのものだ。

無邪気、
言い替えれば、邪気がないという事だ。

今の世の中、子供も大人も邪気だらけだ。
おじいちゃんの目は、一点の曇りも無い、
真実を見られる目を持っていた。

そんなおじいちゃんを、俺は心から自慢できる。

母親達からは、頑固じじいと思われていたかも知れないけれど、
俺にとっては、日本一のおじいちゃんだ。
そして誰よりも優しい人間だったと。

そんなおじいちゃんのようになりたかったけど、
一生俺は近づけそうにありません。

「バカヤロー、おたんこなす、○○に堕ちろ〇〇ヤロー」
人前では、とても話せない下品な言葉が日常を飾る。

おじいちゃん、
俺は邪気だらけだから、おじいちゃんのような立派な人間にはなれません。
ゴメンナサイ。 

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