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父親がいないという事( 第二章 )

今から四十五年以上も前の事、小学校六年の時だ。
たぶん社会の授業か、道徳の授業の時だと思う。いや家庭科か?

いや違う。でも、そんな事はどうでもいい。
担任の先生は女だった。人気はあったと思う。そこそこに。

確か家庭における、お父さんの役割について。だったと記憶している。
私は、元気のあるガキ大将だった。クラスでも人気があったと思う。そこそこに。

友達がイジメられていると、上級生が相手だろうがよく守ってやった。
五年六年は、同じクラスメートで卒業した。

卒業文集に、個人について友達が綴った文章がある。
私の所には、喧嘩をしていると何時も助けてくれた。と書いてあった。

本当だ。よく助けてやった。  でもそんな事、どうでもいい。
その授業中、私は友達と少し騒いでいた。その時だ。先生は言った。

「上善ちゃんちは、お父さんが居ないからそんな気持ちは分からないと思うけど。」
さらりと言った。  

嘘だろ?みんなの前で言っちゃうのかよ。何故か涙が溢れた。
畳屋の女の子を見たら目が合った。泣きそうな顔をしてた。

一番仲の良い友人が駆け寄った。
「上善坊、気にするなよ」と肩を抱いてくれた。

授業中、自分の席を離れ、ずっと私の傍に居てくれた。
給食の時間になった。私は一切口にしなかった。

先生は、何で食べないのだと言った。そして、理由を言いなさいと私に迫った。
とうとう最後まで、一口も食べなかった。

一枚の紙を渡された。これに理由を書いて、家に帰りお母さんにみせなさいと。
そして私は書いた、大きな字で正直に "グレたから食べなかった” と。

家に帰り、それを母親に見せた。生まれて初めてピンタをされた。
その時、たまたま近くに住む叔父が来た。母はその紙を見せ

「こんな事を書いて若水は戻って来たんだよ。ハルさん、何か言ってやっておくれよ」
そう言った。 私は言いたい事をを我慢した。歯を食いしばって我慢した。

今日、教室で起きた事を全部話してやりたかった。でも、言えなかった。分かるだろ。
父親が居ないなんて母が聞いたら、一番悲しむ言葉だったから。

それ以来、この先生のことを二度と先生と呼んだことはない。
卒業式に文集を貰った。私は何の心残りもなく、ゴミとして捨てた。

嫌な思い出と一緒にね。社会人になって、一度会った事がある。
一言も話さなかった。

そうなんだよ先生、一度壊れてしまった心は、なかなか元には戻らないんだよ。


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