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タイムセール

東京に出稼ぎに出た時に、生まれて初めてスーパーのタイムセールに参加した。
午後三時ぐらいだったと思う。

現場が早く終えたので、食料の買い出しに行った。野菜売り場から、順序よく見て回った。
角に着いた時に、放送があった。

「店内奥の鮮魚売り場前にて、タイムセールを行います」俺のいる通路だ。
中ほどを見ると、白衣を着た人がチリーン、チリーンとベルを鳴らしている。

「ハーイ、これからソーセージの詰め放題を行いないます」
響く声で、お兄さんが宣伝していた。周囲には、おばさん達が集まっていた。

まだ、間に合う。急いで足を向けた。
お兄さんが、ビニール袋と手袋を配っていた。私も貰った。

ワゴンの角を、やっとの思いで死守した。ソーセージがいっぱいあった。
お兄さんが合図した。

「ハイ、今からソーセージが無くなるまで。袋がいっぱいになったら、おしまいですよ。ハーイ.」
チリーンチリーン。 本気になった。

手袋をした手で、二掴みして袋に入れた。その時だ。
一人のおばさんが、真ん中から割り込んできた。ひどかった。私は弾かれた。

戦争だ。戦争に参加をした事はないが、戦争以外に、言葉の例えようがない。
ワゴンの近くに戻ろうと試みたが、戻れなかった。

すでにワゴンの周囲は、おばさん達によって包囲されている。おばさん達は凄かった。
裏社会の人よりも、恐いと感じた。

” ソーセージだよね? ” 自分の心に問いかけた。
私はビニール袋をぷらぷらしたまま、冷静にいま行われている戦争を見守った。

この人達には、謙譲の美徳という精神は無いのかと。
私は諦めた。残念、援軍来たらずといった心境だ。気付いた事がある。

日本人は、狩りが得意だという事を。クマ、イノシシ、シカ、キジ、カモ、イチゴにブドウ。
ナシにリンゴ、キノコ。そして、食えない葉っぱまでも...。

これは多分、狩猟民時代の名残りだな。いまおばさん達には見えていない。
(ソーセージしか)本能だ。 これは生き抜くための本能。

一人二人おばさんが去り、一人最後のおばさんが立ち去ろうとしていた。
ビニール袋はパンパンになり、ソーセージが山のように刺さっている。今にもこぼれそうだ。

その時だ。おばさんが私の置かれた状況を察したらしい。そして一番上の、今にもこぼれそうな
ソーセージを四、五本抜くと私のビニール袋に入れてくれた。

「ホント大変よね」と言いながら。私はお礼を言った。
そして、ワゴンに残って折れたソーセージを袋に入れた。それでも五、六本はあったと思う。

一袋五百円。 白衣のお兄さんが笑ってた。そして、ポケットからマジックとシールを出して
百五十円と書いて、私のビニール袋に貼り付けてくれた。

顔を見たら「我援軍とならん」とでも言っているかのように、神々しいお兄さんの顔がそこにはあった。

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