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運動会

運動会、この日は俺にとって年一度の活躍の場だった。
お勉強では恥ずかしながら、活躍する事は出来なかったが、この日だけは違う。

保育園から小中学校までの運動会で俺は、全ての徒競走で一等賞を取った。
さぞかし母は自慢できた事だろう・・・。年に一度のこの日だけは。

今と違って昔の運動会は、学校だけの運動会ではなく、町内会全てのお祭りの要素が強かった。
地域を挙げての一大イベントなのだ。

そんな中で、一等賞は自分だけの喜びではない。家族や親戚、地区全ての喜びに繋がる。
それは別に一等賞を取らなくてもいい、この運動会に参加した全ての者達が喜びを共有できるのだ。

今でも思い出す運動会がある。四十五年も経ったのに三度はその運動会の夢を見たと思う。
夢の主役は俺じゃない。すだっちょだ。すだっちょとは、同級生のあだ名だ。

小学校からの同級生だった。何時も笑顔で俺の後を付いてまわる。
同じ年だったが、可愛いい弟のような存在だった。おとなしいので、よくイジメられる。

そのたびに俺は守ってやった。誰々にやられたと聞けば、すだっちょの敵を討った。
愛嬌があり、頭が良く可愛いヤツだった。中学になってクラスは別々だった。

AからFまで六クラス、俺がBですだっちょがEクラス。
その一年の運動会の百メートル走ですだっちょが言った・・・走っている最中に。

「若水ちゃーん、待ってー」
中学の卒業文集に載っている、その運動会の写真が。

ゴール手前、五メートル位だろうか、俺が先頭を走ってあと少しだというのに後ろを振り向いている。
街中で後ろから呼び止められ、立ち留まり後ろを向く様な大きな振り向き方だ。

俺は聞いた。ハッキリと「若水ちゃ~ん、待って~」 そうだ、今まで何百回と聞いて来たあの声だ。
すだっちょが俺を呼んでいる。・・・こんな時に。

身の覚えのある呼び掛けに、俺の身体が条件反射を起こしたのだ。
写真に写る観客が皆、大笑いしてる。お袋が言った。

「須田君が若水の名前を叫びながら走って、みんなが大笑いしてたんだよ!」と。
すだっちょは頑張った。俺の背中を追いながら。

保育園から今まで徒競走では何時もビリかその上だったそうだ。
それが六人中、三位でゴールをしたのだ。本人もびっくり、見ていた両親もびっくり。

人生初の三位入賞に、その日ケーキを買って家族でお祝いをしたそうだ。
「良かったね」 すだっちょに言った覚えがある。

でも、すだっちょよ何で言ったんだ。あんな場面で待ってくれなんて・・・。

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