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パトカーに乗った迷い犬

東京に出稼ぎに出ていた。会社は多摩西部にある小さな建設会社だ。
僕は内装の仕事をしていた。会社の倉庫は別の所にある。

会社から車で二十五分はかかるだろうか。山を切り開いた中にある。
ある日の事だ。倉庫に行く途中で道の端を犬が歩いていた。首輪はしていなかった。

迷い犬だ。周りには人家もあり、車の交通量も多かった。僕は心配したが、犬を通り越した。
そして先にあるコンビニで買い物をするために店に立ち寄った。

五、六分以上は店内に居ただろうか?買い物を済ませ外に出た。その時だ。
店の真向かいには交番がある。

その交番に先程の犬が小学生の男の子に首筋を掴まれて交番に入るところだった。
犬は小学生よりも大きい、とても滑稽で不思議な光景だった。

犬が小学生を交番に? いや、小学生が犬を交番に連れて行ったのだ。偉い子だ。
僕は嬉しくなった。それと安堵感。

僕がした善行ではないけれど、いい事をしたと納得して倉庫へと向かった。
しばらく倉庫で作業をし、帰りにファックスを送るためにまたコンビニに寄った。

交番の前にパトカーが止まっているのが、遠くからも確認することが出来た。
駐車場に車を止めた僕は、真っ先にパトカーを見た。

そしたら何と、その後部座席にはあの犬が乗っているではないか!


それも正座をするように行儀良く。思わず吹き出してしまった。
普通なら保健所の車が来るのだろうけど、僕はひとまず安心した。

でも犬はもう成犬だったので、保健所に引き取られたら飼い主が現れない限り悲しい末路をたどる。
これだけ長い間交番に居るという事は、ここのお巡りさんが何としてでも飼い主を探してやりたいという、強い信念を感じられた。

犬の顔を見たら落ち着いていた。真正面を見てただじっとしている。
これから自分に待ち受ける運命も知らずに・・・。可哀想な結果にならなければいいと願った。

犬はやかてパトカーと一緒に何処かに行ってしまった。
十日後、倉庫に行く機会があった。あのコンビニに寄った。

僕は犬の事を思いだし交番に目を向けた・・・。見た。
一瞬わが目を疑った。何とあの犬が交番の中に居る。正しく犬のお巡りさんだ。

嬉しくて嬉しくて、たまらなかった。
ドッグフードをトラック一杯にして、持って行ってやりたいぐらいだった。

気持ちだけで悪いけど・・・。
犬は行儀良くお座りをして、お巡りさんと向かい合っている。

お巡りさんが、何か言っているようだった。犬はしっかりとお巡りさんを見ている。
その微笑ましい姿に、心が温まる思いだった。何時までも見ていたい光景だった。

その後も何度かコンビニに行った。その度に交番を覗いた。
小さな庭でお座りをして、通りゆく人や車を見ていた。僕は安心した。

そして、心の中で犬に名前を勝手に付けた。勇(イサム)そうだ。勇が良いと。
勇、何時までも元気でな!優しい飼い主の巡り会えて良かったな!

勇、僕は明日信州に帰るよ。じゃあな、勇また会う日まで。


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