売り言葉に買い言葉
- 2018/11/28
- 20:08
最初に言っておく。この言葉は、度胸とタイミングが必要だ。
ヘタをしたら相当もつれ相手から反感と怒りを買う。
国同士で考えたなら、ヘタして戦争、良くて国交断絶だ。
気を付けた方がいい。
これは相手に非がある場合にだけ、効力を発揮する。
人は日々生活の中で、ストレスや不安を抱いて生きている。
人の出来が良ければ自制が効き、自分の精神状態に左右されず、
穏やかに平素と変わらぬ態度で人と接する事ができるだろう。
けれどすべての人がそうじゃない。
多くの人が、少しのことで腹を立てる。
「えっ私が何かしましたか?」
という事がしばしばある。
一方的に理不尽に怒られて、黙っているとやがてやって来る。
「うんとかすんとか言ってみろ!」
そうだこの言葉だ。
「うんとかすんとか」
きっと、黙っている者に対して苛立ちを感じ、
何か言わせようとしているのだろう。
言われた方は、たまったものじゃない。
何一つ悪い事をしていないのに・・・・。
でも一応自分で回想してみる。
何か悪いことしたっけ。
この場合、教科書通りに行けば、
「うん」
が、的確な返答になる。
しかし人によっては、それができない人もいる。
別に悪意があるわけじゃない。
よほど腹に据えかねたのか、血迷ったかのどっちかだ。
できない人の返答は、
「すん」
である。
うんとすん。
どっちか言えってことでしょう。
一応強要してるんだから、どっちか言わないとね。
「うん」でも、その場面によっては度胸がいるのに、
「すん」と言っちゃうんだから、
こりゃまいった。
十八の時、自動車教習所に通った。
四段階の路上教習、三時間目だ。
季節は夏だった。
教習車には、各背番号が付いていて、その日に乗る車の番号札を、その都度渡される。
教習車はかなり沢山あり、目標とする自分の背番号を探すのに、
毎回苦労する。
その日、たまたまいつもより、
自分の教習車を探すのに、時間がかかった。
でも周囲を見ると、まだ探している人もいた。
教習車に行くと、いきなり教官が行った。
「コノヤロー! 何時まで待たせるんだ。」と。
そして、「早く乗れ!」と言い、
私は助手席に座った。
四段階は路上教習なので、そのまま教官が路上に出た。
路上に出るなりまた言った。
「何で早く来ねぇんだ! 何をしてた。すいませんの一言もねぇのか,このバカヤロー」
私は決意した。
交通量の少ない路上で運転を交代した。
教官は完全命令調で言った。
「そこを曲がれ、あそこを左だ、
お前は口がきけねぇーのか、おしか?」と。
一切口を開かない私に更にまくしたてる。
「うんとかすんとか言ってみろ、コノヤロー」
私はそれでも口をきかなかった。
車の運転には自信があったので、何一つ失敗はしなかった。
心の中で葛藤した。
人通りの少ないところに行っちゃおうかな?
教官は、どこどこを曲がれ!といった後に、同じことを繰り返す。
「お前は本当におしか? うんとかすんとか言ってみろ、コノヤロー」
私の我慢も四段階に入っていた。卒業まであと少し。
あと一回言ったら決行を決意した。
どうせ今日は、印鑑を押してもらえないと思ったからだ。
選択肢は二つ。人通りの少ないところにいくか、
言葉で返すかだ。
そろそろ、教習時間の終わりにやって来た。
この信号を曲がったら、もう教習所の通りだ。
信号待ちの時にまた言った。
「このヤロー、うんとかすんとか言えバカヤロー」
間髪入れず即言った。
「すん」
「えっ」
「すん」
「このヤロー人をバカにしているのか!」
教官は、もの凄い勢いで怒り狂っている。
私は、してやったりと思った。
すんの後は、勿論余計なことは言わない。
教習所に近づくにつれ、教官に変化が表れた。
教習所の隣は高校があり、前に近づいた時だ。
「そこはゆっくりね、はい左にウインカーを出して」
さっきと別人だ。
この変化はどうした?
こっちが戸惑った。
教習所にこの暴言を告げ口されると思ったか、
バカは相手にしない方がいいと悟ったのか、とにかく驚いた。
でもさらに驚いた。
教習所に入り、所定の位置に車を止めた途端
「あー、悪かったね、あんなことを言って。ゴメン本当に悪かった。」
教官が放った言葉だ。
また更に驚いた。
印も押し、外にある水道で暑いから水を飲めと勧める。
この暑さで、この人頭をやられたか、普通じゃないかのどっちかだと思った。
人は黙っていると不安になるらしい。
でも私の気概があってこそ、導いた私の勝利だ。
別に世の中、勝負で物事を決めている訳ではないが、
理不尽には私は屈しない。
だから戦う。
でもよかったですね教官、
私が裏路地で車を止めなくて。
人間はね、どんな時でも平常心で人と接してもらいたいものですね。
ねぇ教官。


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